GW中に友人宅のお庭でフェンス工事をしていた時のこと。
柱立ては前日までに終え、いざ1枚目のパネルを取り付け始めたところで、友人から衝撃の一言。
あ、パネルは内側に向けて欲しいんだけど。
っ!!! えっ……??
柱固めちゃってからじゃむりだよ?!
まさかの要望にびっくりしすぎて答えてしまったけど、
柱や金物、パネルの構造をよく見たら今回のフェンスの場合加工すれば変更可能だと気がついた。
追加かかっちゃってもいいので、できれば変更して欲しいな
というわけで、追加費用をいただいて、向きを変更する加工をすることになったのでした。
加工すれば変更できそうでよかった〜!
LIXILフェンスABシリーズは金具だけ付け替えればなんとかなるみたいだね。
※いやー、、パネルの向きは事前に確認することもあるんだけど、内向きに付けたいという希望は意外と少ないので、今回は聞き忘れてしまったのでした(汗)
というわけで、この記事では、
【すでに柱を立てちゃった後で、目隠しフェンスのパネル取り付けの向きを変更する方法】
を詳しく解説してみようと思います!
※フリーポールの場合
・今回のフェンス(LIXILフェンスAB)ではパネルの表裏を変更することができましたが、フェンスの種類によっては柱自体の形状に向きが決まっている製品も多いので、柱自体を埋め直さないと変更できない場合もあります。
☑️フェンスABシリーズは、柱の金具付け替え加工が出来れば、パネルの向き変更は可能。
フェンスABシリーズの全てのタイプで確認したわけじゃないけど、カタログで柱とパネルの形状を確認したところ、たぶん変更可能と思われます。
パネルの向きを変更するために必要な加工は、大きく分けて2つ。
①柱の下に付いている「パネル受け金具」を取り外し、内側に取り付け直す
②柱の上に空いている「パネル押さえ金具」の取り付け穴を、外側に空ける
このうち、大変なのが①の下の受け金具の位置を変更する方で、これが技術的に出来れば、②の加工は楽勝です。
なので、この記事では①の作業をメインに解説することにします。
パネル本体には、加工の必要は必要ありません。
お隣さん側から、友人宅に向かって撮影した写真です。(受け金具を取り外す前に撮影しておけば良かったですね^^;)
通常の取り付けでは、柱の外側(お隣さん側)にパネルがセットされる作りになってます。
今回のケースでは、標準仕様で柱を立てた後からパネルを取り付ける向きを変更するため、外側についているパネル受け金具を内側に取り付け直すという加工が必要になるわけですね。
ちなみに、上の画像の大小2つの穴が空いているのは、下の大きな穴が受け金具を固定している5mmのビスの穴で、上の小さな穴は、金具がクルクル回ってしまわないための、金具の出っ張りが刺さる溝の役割になっています。
なので、正確、精密な加工が必要になります。
正確に加工するためには、まず最初に穴の位置を正確に反対側に書き写すことがめっちゃ大事です。
金具を外した穴の位置を、反対側に書き写す方法はいくつかあると思いますが、上からスケールで測りづらかったので、今回は「スコヤ」という道具を使って書き写しました。
差金(さしがね)でも役割は同じですが、こういう場合はスコヤの方がコンパクトで角材にピタッと当てやすい形状になっているので作業しやすいっす。
スコヤを使って穴の位置を正角に書き写す
ブロックの高さが腰よりちょっと低いくらいだったので、だいぶ前屈みになって頭に血が上るのに耐えながらヘンな体勢で書き写しました。
人が見ていたら、「何やってんだ、あの人w」って思われそうだけど、これも正確な作業のため!
書き写すのがバッチリ正確にできてしまえば、半分終わったようなもんなので、ここは集中しましょう!
あまり太い線だと精度が落ちてしまうので、0.5mmくらいのボールペンがお勧めです。
穴の空いた面に線を書いたら、反対側に写すために、側面を一度経由する必要があります。
ここでも、高さがズレてしまわないように神経を集中して書き写します。
側面の線は、全部書く必要はないので、中間を省いて端と端だけちょこっと書くようにしました。
同じ要領で内側にまで正確な高さを書き写すことができました。
内側は、金物でほとんど隠れるのと、正確な穴あけをしやすいように端から端まで線を書いちゃいます。
次で改めて解説しますが、縦にうっすら見ていえる白い線が、中心の線です。
正確な加工のためにノギスを活用する
中心の縦線を簡単に、そして正確に書くのに、ノギスがめっちゃ便利です。
角パイプの幅が32mmだったので、端から16mmの位置に線を引きます。
ノギスで幅を測り、線を引くのにもそのままノギスを使います。道具を持ち替えなくていいので早い。
書くと言っても正確には薄く傷をつけるので、このやり方には賛否両論あるかも知れません。
私はスピードと正確さ、再現性を重視しているのでこの方法をよく使います。(もちろん完成時のことも配慮して必要最低限に使用してます)
脳みそのメモリは限られているので、一つ一つの作業をできるだけ簡単にするのが大事っす!
現場でミスると高くつくからね!
ノギスの幅の合わせ方
ノギスの幅を16mmに合わせているところです。
メインの目盛の16mmのところに、下の1〜10まである目盛の0の線を合わせると16.0mmという幅になります。
ノギスの幅を合わせたところで、ズレないようにネジ(0.05mmという数字の上に見えているやつ)を固定します。
この画像ね(笑)もう穴あけ終わっちゃってますが、ノギスで線を引くやり方はこんな感じです。この画像で言うと、下から上に向かってノギスをスライドさせる感じです。
・線を書かなくていい方(上の爪)には傷がつかないように注意しましょう。
穴あけ&ねじ山の加工
さて、ここからは穴あけについて解説します。
穴あけに解説なんて必要?と思われるかもですが、下の受け金具の穴加工に関しては角パイプが二重になってて(※)加工がちょっとだけややこしいので、完成イメージを先に説明しておきますね!
※フェンスの高さによって補強パイプの有無が異なります。
②下の穴は、金具を5mmのビスで固定するための穴で、外側のアルミの角パイプには5.2mmくらいのバカ穴を開け、内側の鉄パイプの方は4.2mmくらいで下穴を開け、5mmのタップを切ります(ねじ山を作ること)
イメージ湧きましたでしょうか?
つまり、ビスは外側のアルミではなく、中に入っている鉄の補強材にだけ効かすと言うことです。
アルミの角パイプは、ただのビスの通り道なので、あえてサイズをビスより少し大きい穴を開けて、ビスの邪魔にならないようにします。
え、、説明が長いって?(笑) だってさ、ここがイマイチよくわからないまま先に進んじゃうと、後で混乱すると思ったので。。
と言うわけで、イメージとしては上記の通りなんですが、実際の作業の手順はこれから解説していきますね。
キリのサイズを確認
元の穴より大きすぎると、金具がガタついちゃうので、なるべく近いサイズで開けたいところです。
上の写真は、元々金具がついていたところに、キリの根本部分を差し込んでサイズを確認しているところです。
これくらい小さい穴だと、ノギスでは測りにくかったので、キリを差し込んでみて、サイズ感を確認してみました。
で、そのキリをノギスで測って、元々の穴が何ミリくらいだったのかを確認します。
キリの根本には元々サイズが刻印されてるんだけど、使っているうちにすぐ消えちゃうんだよね^^;
3.5mmくらいだったかな。確か。(笑)すぐ忘れちゃう
(ぶっちゃけ、同じくらいの穴開ければいいだけなので、サイズ確認しなくてもいいっちゃいいんですが。。)
穴あけ作業ステップ1
まず、上の穴のサイズ(3.5mm)のキリをドリルに装着したので、内側の鉄パイプまで一気に貫通して空けちゃいましょう。
上の穴に関しては、これで加工完了です^^
ついでに下の穴も同じサイズで穴空けしちゃいます。
え、下の穴は違うサイズじゃないの?って思われた方、理由もちゃんと後で説明しますね。
こんなふうに穴空けの印として十字に線が入っていると、穴の中心がズレた時にわかりやすいでしょ?
(下の穴がちょっと左に寄ってる気がするけど、ここでは見なかったことにしましょう。)
我々プロは、穴の開け始めにちょっとズレていたら、ドリルを器用にナナメにして修正するんですが、ドリルでの金属への穴開けに慣れていない方は危ないので、センターポンチの使用をお勧めします。。
最初に小さめの穴を開けちゃう理由
なんで下の穴も3.5mmで開けたかというと、理由は2つあります。
2つ目の理由は、穴が小さいので切削量も少なく、結果として貫通までの時間も早いからです。大きい穴を開けるのに比べてかかる労力も少なくて済みます。位置を正確に開けるというところに集中力を使うので、少しでも軽い力で開けられる方が、精密な力加減に集中することができるわけです。
実際経験してみるとよくわかるんですが、大きい穴を開ける場合でも、最初な小さい穴を開けて、段階的にキリを付け替えて穴を広げていく方が、作業も楽で時間も早かったりします。
穴空け作業ステップ2
はい、では次のステップ2と3いきましょう。
ステップ2と3は、順番どっちでも大丈夫なので、一緒に解説しちゃいますね。
ステップ2 5.2mmのキリで外側(アルミ)にだけバカ穴を先に開けます。
このとき勢い余って内側の鉄にまで貫通しないように注意しましょう。(ステップ2の写真撮り忘れちゃいました)
穴あけ作業ステップ3
ステップ3では、4.2mmのキリに付け替えて、内側の鉄パイプを開けます。上の画像はステップ3の状態ですね。
この4.2mmの下穴に対してねじ山を作るので、なるべく柱に対して直角になるように空けましょう。
4.2mmはよく使うサイズなので、探しやすいように黄色くマーキングしてます
ステップ4 タップでねじ山を作る
ステップ2と3を終えたら外側(アルミ)には5.2mm、内側(鉄)には4.2mmの穴が空いた状態になっています。
そしたらいよいよ、金具のネジを止めるためのねじ山を作ります。写真は僕がめっちゃ気に入って使っているイシハシ精工のジェットタップというやつ。
切れ味抜群でまじめっちゃ軽く開くのでほんとオススメ。ほんのちょいCRCつけるのがポイント。
タップ加工が終われば、下の受け金具を取り付けるための加工は完了っす。
・受け金具を取り付ける
・柱上部のパネル押さえ金具取り付け穴を開ける
の2つですね。ここまでくればもう終わったも同然よ!
ステップ5 休憩。キリを研いでます。
さて、記事がめっちゃ長くなってきたので、ちょっと休憩がてらキリを研ぎましょう
キリの切れ味が悪い! 研ぐべし。。
実際、この日の作業中にキリの切れ味がイマイチだったので途中で研ぎました。
キリでもノコギリでもそうですが、刃物系工具を使った作業で実際に仕事をするのは、ほんの0.00何ミリの刃先の部分です。
この部分が鈍(なまくら)だと、余計な力が必要だったり、音がうるさくなったり、熱が発生したり、当然作業時間も余計に長くかかるしロクなことがありません
なので、キリが切れないなぁと感じたら躊躇せずすぐに研ぐのが正解。研ぐのにかかる時間と手間(コスト)以上に、その後の時短効果と作業が楽になる効果(リターン)が大きいのです。
しかも、、キリ研げる職人はモテます。デキる職人っぽい感じでます。
受け金具の取り付け
これはほとんど説明不要ですね。外した金具を、今加工したばっかりの穴に取り付けるだけです。
加工がうまくいってれば、サクッと取り付けできるはず!
問題があるとしたら、ちゃんと全く同じ高さに付け替えできているか。
何しろ金具に遊びがないので、許容範囲がシビアなのです。
まぁここで心配しても仕方ないので、全ての柱の加工を一気に終わらせちゃいます。ちなみに、この日加工した柱は7本でした。
柱上部の穴加工
残りは最後の、柱上部の穴を外側に開け直す作業です。
さっき説明した作業に比べたらめっちゃ簡単なので、写真もこれ1枚しか撮ってませんでした^^;
まず、上から穴の中心の寸法をノギスで測り、ノギスを固定して反対側にそのまま線を書き写します。この写真はその場面ですね。
上から穴の中心までは9mmでした。残り6本同じ作業をするので、1本目で数字を覚えておくと、後が早いです。
高さを書き写したら、中心の線もノギスを16mmに調整して書き写します。
ちなみに、書き写す作業のことを専門用語で「罫書く(けがく)」と言います。
7本の柱を全部先に罫書くために、靴を脱いでブロック塀の上をてくてく歩いて一気に罫書きを終わらせて、穴空けも一気に全部やっちゃったよ^^
穴空けのサイズは、パネル押さえ金物のビスが4mmなので、4.2〜4.5mmくらいでOKです。
狭いところはスタッピ1つあると便利
ちょっと今回のテーマからは逸れちゃいますが、この時の作業で使わざるを得なかったのでついでに紹介させてください(笑)
こんなふうに、隣の敷地ギリギリに障害物がある場合は、通常のドライバーだと入らないので、スタッピが必要な時が結構あります。。
ベッセルっていうメーカーのこれがビット差し替え式で、コンパクトさと握りやすさのバランスが良くて気に入って使ってます。
あ、ちなみにこの作業、反対側に残ってしまう穴を塞ぐために、代わりのビスを新たに用意したので、それを締め込んでいる場面です。
↓こんなやつ
まぁこれは絶対つけなきゃダメなわけじゃないけど、ちょっと事前に気づいたので作業場から適当なビス探して持ってきました。気が利くでしょ?
ちなみにこのビスを言葉で伝えると、
「ステンレス M5(太さ)×10mm(長さ)のトラス(頭の形状)ビス」ってなります。
ホームセンターなどで探すときはこれで伝わると思います。。
もう一枚、同じ工程の写真あったので↓
はい、加工関係の写真は以上になります。全ての加工が問題なく終わり、あとはパネル取り付けです。
無事に完成!!
加工が全て終わったら、サクサクとパネル取り付けていくだけなので、途中の写真は撮ってませんが^^;
全く同じ高さに金具の付け替えができたので、パネルの取り付けも問題なく無事に完成しました!
こちらがリクシルのフェンスAB YS3型 T1200 シャイングレー+チェリーウッドを、内向き(通常と逆)に取り付けた完成写真になります!
色合いも明るく、事前にちょっと心配していたほどの圧迫感もなくていい感じに出来上がったと思います(^^)
ありがと〜!いいね!
パーフェクト!
友人夫妻にもご満足いただけました(^^)
高さは、ブロック3段ちょい(約600ちょい)+フェンス1200=1800ちょいほどです。お隣さん側にある物置が隠れる高さに設定したそうです。
フェンスを逆向きにするメリット・デメリット
フェンスを反対に向けてつけるのにデメリットってないの??
あんまりデメリットというほどでもないので、最後の方に持ってきたのですが、あるとすれば
・知らない人がパッと見で、お隣さんのフェンスと勘違いする
・反対側から見たとき、裏面が見えてしまう
こんなところでしょうか?
(もちろん、今回施工した友人には加工する前に伝えた上で決めてもらいました)
・家側からの見た目がいい
メリットはもちろん、見せる面を家側にすることで普段自分たちが見る分にはスッキリいい気分なことです。
最後に、今回の加工に使った道具を紹介します
最後に、今回の記事で紹介した道具たちを紹介して終わりにしますね。
左から順番に
- スコヤ
- 鉄鋼キリ
- ジェットタップ
- キリ研ぐやつ
- スタッピ
- ノギス
- マキタ充電ドリル(18v)
ちなみにインパクトドライバーは既存金物を取り外すときだけ使いましたが、ぶっちゃけ無くてもぜんぜんできます。
気になる工法や道具があったら、ぜひ試してみてくださいね!
自分のスキルにする投資は裏切らないですから。
今回もめっちゃ長い記事を最後まで読んでいただきありがとうございました!
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